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「産後は骨盤矯正しないとダメ?」と不安なお母さんへ|産後の体と骨盤の本当の話

出産をしてから、腰が痛くて子どもを抱っこするのがつらい
産後の骨盤矯正をしないと、体が歪んでしまうと聞いて不安

このようなお悩みや不安を抱えて、来院されるお母さんはとても多くいらっしゃいます。

SNSやインターネット、健康雑誌などを見てみると、

「産後は骨盤矯正をしないといけない」
「そのままにしておくと、体が歪んで不調が出る」

など、さまざまな情報があふれています。

産後は、育児や家事に追われ、心にも体にも余裕がない時期。
本当は自分の体を労わりたいと思っていても、どうしても後回しになってしまいますよね。
そんな中で「産後に骨盤矯正をしないといけない」と聞き、
将来の体のことを心配しながら、慌ただしい毎日を過ごされている
お母さんは、決して少なくありません。

このブログでは、

・そもそも産後に骨盤矯正は本当に必要なのか?
・育児や日常生活の中で起こりやすい体のバランスの崩れ
・忙しい合間にできるセルフケアの方法

について、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。

⭕️産後の骨盤矯正は本当に必要なの?

骨盤にある仙腸関節(せんちょうかんせつ)という関節は、
普段はとても強靭な靭帯や筋肉に覆われており、
関節の構造的にも、日常生活の中ではほとんど大きく
動くことのない関節だと言われています。

また、恥骨の部分にある関節も、靭帯や軟骨によって支えられており、
可動性は残しつつも、関節が大きくずれないように、
しっかりと安定する構造になっています。

そんな骨盤も、妊娠中には出産に向けて、赤ちゃんが産道を通り
やすくなるように、リラキシンというホルモンが分泌されます。

このリラキシンの働きによって、
普段は強く安定している骨盤の関節や靭帯が、
出産に向けて少しずつ緩みやすい状態になっていきます。

そして無事に出産を終えると、
リラキシンの分泌は徐々に低下していきます。

また、エストロゲンという女性ホルモンの働きにより、
骨盤底筋などの筋肉も、回復しやすい状態へと向かっていきます。

そのため、個人差はありますが、
一般的には半年〜1年ほどの時間をかけて、
出産によって緩んだ骨盤は、少しずつ締まっていくと考えられています。

⭕️産後に体の不調を感じるのはなぜ?

産後のお母さんたちから、よくご相談を受けるのが、

・肩こりや肩の痛み
・腰痛
・猫背
・反り腰
・股関節の痛み
・膝の痛み

といった症状です。

実際、これらのお悩みを抱えながら、育児を頑張っておられる方はとても多い印象です。
その中でも、
【腰痛・猫背・反り腰・股関節の痛み】については、
「骨盤と関係がありそう」というイメージを持たれている方も多いと思いますので、
ここでは、これらの症状と産後の体との関わりについて解説していきます。

産後に、上記のような症状を訴えることが多い理由は、
産後の骨盤の緩みだけではありません。

出産後すぐは、まだ骨盤が締まりきっておらず、関節が緩い・不安定な状態です。

その状態で、
・子どもを抱っこする
・母乳やミルクを飲ませる
・寝かしつけをする
・家事をこなす

といった動作が毎日のように続いていきます。

骨盤が不安定な分、股関節や背中・腰など、比較的安定している関節や筋肉に、
より多くの負担がかかりやすくなります。

それが続くことで、
体の使い方に偏りが出てきて、少しずつバランスが崩れていきます。

例えば、
お腹側にくる抱っこ紐を使う習慣があると、赤ちゃんの重さによって腰が反らされ、
「反り腰」になりやすくなります。
また、座りながら抱っこして寝かしつけをしたり、
母乳やミルクを飲ませている時の姿勢が崩れると、
猫背になったり、骨盤と股関節のバランスが崩れたりしやすくなります。

このように、
出産後の骨盤が緩んでいる状態は、
痛みやバランスの崩れが起きやすくなる“きっかけ”の一つではあります。

ただし、
それ以上に大きいのは、育児や家事による体の使い方の積み重ねです。
日常の負担によって筋肉が固くなり、体の使い方にクセがつき、
その結果として、体のバランスが崩れ、さまざまな不調につながっていくと考えられます。

育児や家事による体の使い方のクセによって、
どうしても背中や腰が丸くなりやすく、
「猫背」や「反り腰」といった姿勢になりやすい傾向があります。

それに加えて、
姿勢が崩れてしまうもう一つの大きな理由があります。

それが、育児・家事などによる日々の疲れの蓄積です。
人は誰でも、疲れてくると、自然と頭は前に出やすくなり、
肩は下がり、背中は丸くなっていきます。

また、体幹(背中や腰)にも力が入りにくくなるため、
無意識のうちに「猫背」のような姿勢になりやすくなります。

では、このような場合、
無理に姿勢を「正す」必要はあるのでしょうか?

体は、疲れているからこそ、体を休めるために、必要最低限の
筋肉だけを使い、少しでも楽な姿勢を取ろうとしています。

その状態で、「姿勢が悪いから」と無理に背中を伸ばし続けることは、
かえって体にとって負担になってしまうことも少なくありません。

よく【理想の姿勢】という言葉を目にしますが、
実際には、その人の体の状態や、その時の疲労の度合いによって、
“楽に保てる姿勢”は変わってきます。

大切なのは、常に見た目の良い姿勢を作ることよりも、
疲れがたまりにくく、体が無理なく使える状態を整えていくことだと考えています。

⭕️忙しい合間にできるセルフケアの方法

産後のお母さんたちのために、
SNSでも、さまざまなストレッチや筋トレの動画が流れています。

今現在、そういった動画を見てストレッチなどを行っていて、
痛みなどの症状が特に出ていない場合は、
無理のない範囲で、そのまま続けていただいて大丈夫です。

筋肉を定期的に刺激してあげることは、
体の回復という意味でも、とても大切なことです。

一方で、
「やらないといけないとは思っているけど、なかなか時間が取れない」
「いざやろうとしたら、子どもが起きてしまって…」
と感じている方も多いのではないでしょうか。

実際、当院に来られている患者さまからも、
「少しストレッチはするけれど、疲れや寝不足が続いていて、
少しでも早く休みたいので、子どもの寝かしつけと一緒に寝てしまう」

というお話をよく伺います。
そこで今回は、
そんな忙しい中でも、その場で簡単にできるセルフケアを
いくつかご紹介します。

▶︎背骨と体幹をやさしく動かすセルフケア

【姿勢】
正座・椅子に座ったまま・仰向けで寝転んだ姿勢いずれでもOKです。

① 両腕を伸ばして、両手を組みます。

② 鼻からゆっくりと、4〜5秒かけて息を吸います。

③ 息を吸いながら、
組んだ両手を天井の方に向かって、ゆっくり持ち上げていきます。
このとき、目線は組んでいる両手を見るようにしてください。

④ 両手が耳の横あたりまで来たら、
そこから体を軽く左右どちらかに倒します。
(体を横に倒すことで、体の横側や背骨がやさしく伸びます)

⑤ その姿勢のまま、
8〜10秒くらいかけて、ゆっくりと息を吐いてください。

仰向けでできる太もも裏のセルフケア

【姿勢】
仰向けで寝転んだ状態で行います。

① 片方の足の膝を持ち上げます。
股関節と膝が、だいたい90度くらいになる位置が目安です。

② 太ももの裏(膝の裏あたり)を、両手で包むように持ちます。

③ そのまま、膝をゆっくり伸ばしたり、またゆっくり曲げたりを繰り返します。

④ 膝を伸ばすときは、無理にまっすぐにしようとしなくて大丈夫です。
自然に伸びるところまでで十分です。

⑤ これを、呼吸を止めずに、
10回前後、ゆっくり行いましょう。反対の足も同じように行います。

※ポイント
・痛みが出るところまでは伸ばさない
・「伸びているな」「ゆるんでいるな」と感じるくらいがちょうど良い
・勢いをつけず、ゆっくり動かすことが大切です

⭕️さいごに

産後の体は、出産という大きな出来事を乗り越えたあと、
時間をかけながら、少しずつ回復していく力を持っています。

「産後は骨盤矯正をしないといけない」
そんな情報を目にして、不安になってしまう方も多いと思いますが、
骨盤は、ホルモンの働きによって、本来、自然と安定していく仕組みがあります。

一方で、育児や家事は毎日のこと。
抱っこ、授乳、寝かしつけ、家事…。その一つ一つは小さな負担でも、
積み重なることで、体には大きな負担になっていきます。

だからこそ、産後に大切なのは、「骨盤を締めること」そのものではなく、
日常の中でかかり続けている負担を減らし、体が無理なく使える
状態を整えていくことだと考えています。

完璧にケアをしようとしなくても大丈夫です。できるときに、できることを、少しだけ。
それだけでも、体はちゃんと応えてくれます。

もし、
・痛みがなかなか引かない
・育児をするのがつらい
・自分の体の状態がよく分からず不安
と感じることがあれば、
一人で抱え込まずに、専門家に相談するのも一つの選択です。

お母さんの体が少しでも楽になることは、育児を頑張る毎日を、少しだけ楽にしてくれます。
ご自身の体のことも、どうか後回しにしすぎず、大切にしてあげてくださいね。

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